今日(6月18日)、関東地方には大雨警報が出ています。
しかし、今朝、私が8時半頃出勤するとき、秦野市の近所の一戸建ての工事はいつもどおりに始まっていました。
小雨ならともかく、大雨警報が出ているのに、なぜ作業をお休みにできないのでしょうか。
それだけではありません。完全に日没後、ほぼ真っ暗闇で、ヘルメットの懐中電灯の明かりを頼りに屋根工事をしているのを見かけたこともあります。
また、私の住んでいるマンションでは、夜8時半過ぎまで、別の部屋のリフォーム工事をしていて、さすがに遅すぎると思い、「何時までかかりそうですか? もう時間も遅いのですが」とお声がけすると、職人の方が申し訳なさそうに、「すみません、今日中に終えないとならない部分がありまして、もう少しで終わりますので。。。」とお答えされていました。お声がけした私の方が、なぜか申し訳ない気持ちになったものです。
なぜ、こうしたことが、日本の多くの工事現場で見られるのでしょうか。
その原因の一つと考えられているのが、「工期ダンピング」です。
まず、「工期ダンピング」の法律上の定義を見てみましょう。「その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約」(建設業法第19条の5)
工期ダンピングは、日本の建設業界において深刻な問題の一つです。
これは、元請が競争入札において低価格で入札し、工期を不当に短く設定し、下請がその短い工期を達成するために無理な労働やコスト削減を強いられる状況を指します。このような工期ダンピングは、品質低下や労働環境の悪化、さらには安全性のリスクを高める要因となっています。
工期ダンピングの原因
・発注者のコスト削減志向と厳しい競争環境
元請はコスト削減を最優先とし、工期を短縮することで早期にプロジェクトを完成させ、早期に利益を得たいと考えます。
一方で、元請は競争入札において勝利するために、無理な条件でも受注を確保しようとする傾向があります。
工期ダンピングによる影響
1. 品質低下
無理な工期での作業は、施工品質の低下を招くことがあります。十分な時間をかけて施工することで初めて達成されるべき品質が、急ぎの作業では確保できない場合が多いからです。その結果、完成後に不具合や修繕が必要となるケースが増加します。
2. 労働環境の悪化
短い工期を守るために、労働者には長時間労働や過密スケジュールが強いられます。これにより、労働者の健康が脅かされるだけでなく、労働意欲の低下や人材流出の原因ともなります。
毎日遅くまで残業、休みもほとんどない。。。 ただでさえ、人手不足なのに、若者はさらに建設業を避ける要因の一つにもなります。
3.安全性のリスク
工期が短くなると、安全対策を十分に取る余裕がなくなり、事故や災害のリスクが増加します。
記事冒頭の例の通り、悪天候の中での作業や、真っ暗な夜間での屋根工事などにより、本来ならありえないような事故を誘発することもあります。
工事現場での事故が発生すれば、人的被害のみならず、プロジェクト全体の遅延やコスト増加にも繋がるのです。
政府と業界による対策
既に、工期ダンピングは、建設業法で禁止されていますが、政府はさらなる規制強化を法制化しようとしています。
そこで、工期ダンピングを含む、現代日本の建設業の複合的な問題に取り組むため、「第3次担い手3法」と言われる法改正が成立しました。
法改正による新しい工期ダンピング対策は、近日中に、当HPの別の記事でもご紹介する予定です。
(※ こちらのブログ記事「【第3次担い手3法】建設業法その他の改正について」もご覧くださいませ。)